相続の判例集です。
慰謝料請求権の相続、建物の相続開始後の使用、連帯債務の相続、などの判例です。
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連帯債務は、数人の債務者が同一内容の給付につき、各独立に全部の給付をなすべき債務を負担しているのであり、各債務は、債権の確保及び満足という共同の目的を達する手段として相互に関連結合しているが、可分であることは通常の金銭債務と同様である。よって、債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然に分割され、各共同相続人が、その相続分に応じてこれを承継するものと解すべきであるから、連帯債務者の一人が死亡した場合においても、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者になると解するのが相当である。
相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできないと解するのが相当である。
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。
なぜなら、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に行こうさせることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるからである。
共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は、民法第541条によって遺産分割協議を解除することはできないと解するのが相当である。
なぜなら、遺産分割は、その性質上、協議の成立とともに終了し、その後は協議において債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけと解すべきであり、このように解さなければ、民法第909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。
無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであって、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったからといって、その債務を免れることはできない。
さらに、無権代理人を相続した共同相続人のうちの一人が本人であるからといって、本人以外の相続人が無権代理人の債務を相続しないとか、債務を免れうると解すべき理由はない。
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理人を追認する権利は、その性質上、相続人全員に不可分的に帰属するところ、無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を、本人に対する関係においても有効なものにするという効果を生じさせるものであるから、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではない。
そうすると、他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合に、無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されないとしても、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。
ある者が他人の故意過失によって財産以外の損害を被った場合には、その者は、財産上の損害を被った場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰謝料請求権を取得し、その請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がない限り、これを行使することができ、その損害の賠償を請求する意思を表明するなどの格別の行為をすることを必要とするものではない。
そして、その被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰謝料請求権を相続するものと解するのが相当である。
なぜなら、損害賠償請求権発生の時点について、民法は、その損害が財産上のものであるか、財産以外のものであるかによって別異の取扱いをしていないし、慰謝料請求権が発生する場合における被害法益は当該被害者の一身に専属するものであるけれども、これを侵害したことによって生ずる慰謝料請求権そのものは、財産上の損害賠償請求権と同様、単純な金銭債権であり、相続の対象となりえないものと解すべき法的根拠はない。
民法第711条によれば、生命を侵害された被害者と一定の身分関係にある者は、被害者の取得する慰謝料請求権とは別に、固有の慰謝料請求権を取得しうるが、この両者の請求権は被害法益を異にし、併存しうるものであり、かつ、被害者の相続人は、必ずしも、同条の規定により慰謝料請求権を取得しうるものとは限らないのであるから、同条があるからといって、慰謝料請求権が相続の対象となりえないものと解すべきではない。
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物に被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、同居の相続人を借主とする建物の使用貸借契約関係が存続することになる。
なぜなら、建物が同居の相続人の居住の場であり、居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。
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