教育熱心と教育虐待

親は子どものことがとても大切です。
親は子どもの将来に期待をして、「良かれと思って」子どもを幼い頃から習い事や塾に通わせているという親も多いでしょう。
いわゆる「教育熱心」です。

親が子どもに期待をするのは当然です。
しかし、親が子どものために良かれと思ってやっていることが、実は、子どもを深く傷つけていることもあるのです。
子どものためを思い、ついつい一生懸命になってしまい、子どもの姿が見えなくなり、子どもに無理を強いてしまっていませんか?
このような教育熱心が行き過ぎてしまうと、「教育虐待」になってしまいます。

教育虐待とは、子どもの心や体が耐えられる限界を超えて教育を強制することです。
例えば、
「成績が悪いと子どもを怒鳴りつける」
「睡眠時間を削って子どもに勉強させる」
「子どもが勉強をしていないと親が不機嫌になる」
などといった行動です。

教育虐待を受けた子どもは、自分の親について次のように述べています。
「親は成績がすべて」
「親は過干渉で、自分は教育虐待を受けていたと思う」
「泣きながら英会話をやらされた」
「親がヒステリーを起こすので、親の顔色をうかがいながら勉強をしていた」

教育虐待をされていた子どもの62%は、大人になっても心に傷を抱え、治療を続けているとの報告もあります。
極端な場合、教育虐待をする親の支配から逃れるため、親を殺してしまったという事件もあります。

教育虐待をする親の特徴は、次の通りです。
・親の生い立ちが過酷だった、親も教育虐待を受けていた
・親が、自分の人生に劣等感を抱いている
・親が学歴コンプレックスを持っている
・親に無能感、無力感、不全感がある
・教育以外に打ち込めるものがない
・他人と比較する癖がある

これらの特徴を持つ親は、結果として子どもの学歴に執着するようになってしまいます。

教育熱心と教育虐待は紙一重です。

教育熱心な親は、子どもに共感でき、しっかりと子どもの話しを聞き、対話をし、子どもへのリスペクトがあります。
子どもは親とは別の人格だということを理解しており、子どもが今幸せな状態かどうか、今の状況が無理なら別の道を考えるなど、子どもの状況を客観的に見ることができます。

一方、教育虐待をする親は、親と子どもの心が一体化してしまっています。
子どもは親の作品であり親の所有物である、子どもの成功は親の成功、親がやっていることが良いことだと信じて疑わない、子どもの人生は親の責任である、など、子どもの心を置き去りにしてしまっています。
教育虐待を受けた子どもが親となった時に、自分の子どもに、自分がされたような教育虐待をしてしまうことも多くあります。

現在の日本は、
「あまりにも競争的でストレスフルな学校環境」
「行き過ぎた競争社会により子どもの発達が害される」
状況にあり、2019年に国連の子どもの権利委員会から改善勧告がされています。

日本の教育や社会が教育虐待を生んでしまっている現状を理解し、自分は子どもに教育虐待をしていないか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

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