共同親権の明と暗

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令和6年5月17日、離婚後も両親の双方に親権を認める「共同親権」に関する改正民法が成立しました。

親権とは、子どもの世話、教育、住む場所の決定、財産の管理などを行う親の権利や義務のことです。
親権はこれまで、両親が離婚した場合に、父母の一方にしか認めれられていませんでしたが、今後は親権者を父母の一方とするか(単独親権)、双方とするか(共同親権)、選べるようになります
父母の意見が対立した場合は、家庭裁判所が子の利益に基づき、共同親権か単独親権かを決定しますが、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の恐れがある場合、単独親権となります。

共同親権では、子どもの進学、医療、転居、パスポート取得などの重要事項を決める際に、元配偶者と協議する義務が生じますが、緊急手術、DV・虐待からの避難、入試の合格発表後の入学手続きなどの「急迫の事情」がある時や、子どもの食事の世話など日常的な行為は父母の一方のみで決定できます。

共同親権の問題点として、以下が指摘されています。
・父母の合意がない場合に、家庭裁判所が共同親権と決定してしまうと、一方の親による干渉や支配が継続する恐れがある。
・家庭裁判所が、家庭の表面的なことだけでなく背景まで見通して判断できるのか。
・子どもに医療が必要な場面で、適時に両親の同意を得られず、子の利益が侵害される恐れがある。
・弊害防止の議論が不十分であり、医療、教育、福祉、司法などあらゆる現場に混乱をもたらす。
・子の意見表明権が明記されていない。

父母の一方が拒んでも、家庭裁判所の判断次第では、離婚後も共同親権となってしまう可能性があります。
また、元配偶者との関係が壊れて離婚し、不安な日々を過ごすひとり親にとって、共同親権は、ひとり親をさらに過酷な環境に追い込み、そのしわ寄せが子どもにも及ぶ可能性があります。
父母の関係が険悪なケースでは、子の立場が不安定になることは避けられません。
今後、過去に親権を失った親による共同親権への変更申し立てが可能となり、元配偶者との関係を強制的に再開させられる人が出てきます。
DVや虐待のリスクを精査する家庭裁判所の体制も万全とは言えません。
子の利益を優先するのであれば、家庭裁判所は介入せず、父母が話し合いで合意できた場合に限り共同親権とするのが望ましいと考えます。

私のこれまでの離婚相談の経験から、共同親権のメリットとデメリットを挙げてみます。

【メリット】
・夫婦関係がうまくいかず離婚したとしても、親子が別れることがなくなる。
・親権の有無に関係なく、子どもとの面会ができるようになる。
・親権争いに伴う一方の親による子どもの連れ去りがなくなる。
・子どもの利益や子どもの権利が守られる。

【デメリット】
・元配偶者との話し合いを求められる場面が増え、紛争が蒸し返される。
・でっち上げDV(DVがあったと嘘をつくこと)により、単独親権となってしまう可能性がある。
・DVや虐待のリスクを家庭裁判所が正確に把握できなかった場合、深刻な事態に発展してしまう可能性がある。

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