婚姻を継続し難い重大な事由に関する判例集2

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⇒『婚姻を継続し難い重大な事由に関する判例集1』 からの続きです。

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目次
⇒『婚姻を継続し難い重大な事由に関する判例集1』 からの続き
7.性生活
8.疾病・身体障害
9.過度の宗教活動
10.当事者双方の離婚意思
11.性格の不一致、結婚観・生活観の違い
12.長期間の別居

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異常な性癖の夫(浦和地裁昭和60年9月10日)

結婚2年後頃より夫はポルノ雑誌に異常な関心を持ち始め、自室にこもって見ていたり、妻の性交渉を拒否するようになった。
妻は正常な性生活をするようにと何度も夫に哀願したが受け入れられず、夫婦は別室で寝るようになった。
その他、夫はキセル乗車やゴミ箱をあさるなどの異常な性癖があることなどから、婚姻破綻を認定した。

性交不能の夫(京都地裁昭和62年5月12日)

結婚するに際し、夫は妻に対し自分が性交不能であることを告知しなかったことは、妻の結婚への期待と夫婦間の信頼関係を裏切ったものとし、夫婦間の合意がないにもかかわらず、長期間にわたる性交渉のないことは、婚姻関係を破綻させるものである。

重度の身体障害者となった夫(東京高裁昭和52年5月26日)

交通事故で重度の身体障害者となった夫に対し、妻は当初は献身的な看病や介助を行なっていたが、疲労困憊し、夫婦関係を続けてゆくことが辛く感じるようになった。妻は8ヶ月間献身的に看病してきたことなどが認められ、離婚が成立した。

宗教活動をする妻(大阪高裁平成2年12月14日)

妻は、宗教活動を自粛する気持ちが全くなく、夫婦が同居を再開しても妻の宗教活動により日常の家事や子供の養育に相当の支障が出てくることは目に見え、夫婦共同生活を営む以上、夫婦および家族間の関係が円満にいくように努力し、行き過ぎは慎むべきであるが、妻の行動はその限度を超え、夫婦間の協力扶助義務に反しており、夫婦関係は破綻している。

性格の不一致による離婚(最判昭和38年6月7日)

双方の性格の不一致と愛情の喪失によって、深刻かつ治癒し難い程度に破綻し、婚姻の実をあげうる共同生活の回復はもはや望むことができない状態であるときは、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合に当たるとし、婚姻関係が破綻した場合においても、その破綻につきもっぱらまたは主として原因を与えた当事者は、自ら離婚の請求をなしえない。

信頼と愛情の喪失(東京高裁昭和47年10月30日)

夫婦の結婚生活の不和に、夫の親族の言動が加わり、それぞれが自主的に解決調整する努力を十分払わなかったため、夫婦間に感情的な行き違いが生じ、互いの性格の不一致があらわになって共同生活が不可能な状態に陥ったものであるから、婚姻関係は、一方だけを責めることのできない事情により、破綻して回復の見込みがない状態にあるものと認定した。

性格の不一致(東京高裁昭和54年6月21日)

夫は、高い水準の知的生活を希望し、一方妻は、平凡な家庭生活に満足する傾向があり、夫婦間には、生活観、人生観上の隔絶があった。
夫は、婚約当初から、このような違いを感じており、一度、婚約の解消を申し入れたことがあった。
夫婦に長男が誕生した後、夫が結婚前から危惧していたような生活観、人生観上の隔絶がますます明らかとなり、妻に対する夫の不満が増大していった。
妻は、深刻な話になると発作を起こしがちで、妻が不愉快なときには、夫に当たるかわりに長男に辛く当たることもあった。
そして夫は、精神的な病気となってしまった。
このような事情から、破綻原因の最大の理由は、夫婦の生活観、人生観上の隔絶(いわゆる性格の不一致)であったとしかいうよりほかなく、両者の生活観、人生観はそれぞれの本人にとっては価値あるものであるから、夫婦のいずれにも有責事由とはなし得ない。
婚姻は正常なものに回復することが困難な程度に形骸化し、完全に破綻している。

夫の定年退職後の離婚(東京高裁平成13年1月18日)

夫は、妻の立場を思いやるという心遣いに欠ける面があったことは否定できないものの、妻も、夫が仕事や家庭生活において相当の配慮していたことを十分認識していなかった。
夫婦は別居状態にあり、このまま推移すると婚姻関係が破綻するに至る可能性がないでもないが、当事者双方の年齢などを考慮すると、離婚という道は避けるべきである。夫婦間の子も、婚姻関係の継続を望んでいる。
このような諸事情を総合考慮すると、妻の離婚の意思が強いことを考慮しても、現段階で、婚姻関係が完全に破綻しているとまで認めるのは相当ではない。
 →本件は、その後、上告棄却され、再度調停申立て、地裁、高裁にて離婚が認められた。

育児や家事への協力が不十分な夫(東京地裁平成15年8月27日)

夫の育児・家事への協力不足から、妻は夫との婚姻生活に失望し、別居を望んでいた。その後も表面的には夫婦生活を営んでいたが、夫婦を結びつける精神的絆は既に失われていたものと評価することができる。
そのため、妻は、夫との婚姻生活が完全に破綻状態に至る前に、第三者の男性との間で性的関係を含む交際を始めたことにおいて、破綻を招いた責任の一端はあるが、妻に、婚姻破綻につき専ら責任があるということはできない。
よって、婚姻関係の破綻を認めた。なお、慰謝料請求については棄却されている。

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