従来の養育費算定方式、現在の養育費算定方式、養育費算定の補足事項、についての説明です。
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養育費とは、民法第766条第1項に記載されている「子の監護に必要な事項」として、非監護親から監護親に支払う、未成熟子の養育に要する費用のことです。
以下では、子を監護していない親を「義務者」、子を監護している親を「権利者」と呼び、説明します。
夫婦間の協議で離婚する場合には、養育費について取り決めをすることが一般的ですが、養育費の取り決めができずに協議離婚した場合には、権利者は、家庭裁判所に養育費の支払いを命ずる家事審判(いわゆる調停や審判)を申し立てることができます。
養育費の支払い義務は、自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務(生活保持義務)となっています。
現在、養育費の目安として、以下の養育費算定表が使われています。
★養育費・婚姻費用算定表(クリックすると表示されます)
権利者(養育費をもらう側)が再婚し、再婚相手が子と養子縁組をした場合、子の扶養義務は、第一次的には再婚相手となり、義務者(養育費をあげる側)は、第二順位となり、原則的には養育費の支払い義務を免れます。
権利者が再婚しただけの場合には、再婚相手には子の扶養義務はありませんが、養育費の減額要素として考慮されることとなります。
養育費は、子を養育する親が、子を監護、教育していくのに必要な費用であり、その性質上、定期的に支払われる必要があります。
また、親の収入の変動など、将来的に予測不可能な事情変更が生じる可能性があることから、その支払いについては、月払いが原則とされています。
ただし、当時者間で合意ができれば、一括払いも可能です。
養育費の相場については、裁判所や実務で利用されている養育費の算定方式があります。(上記リンク先参照)
これによりますと、例えば夫の給与年収が350万円、妻の給与年収が100万円の場合、子の年齢が14歳以下とすると、夫が子1人当たりに支払う養育費は月3万円と算出されます。
ただし、夫が持病を持っていて毎月相当額の医療費の出費があるなどの場合は、減額されることもあります。
なお、この算定方式は、子が公立中学や公立高校に通学している場合を考慮したものであるため、子が私立学校や高額な医療費が必要な場合などは、 別途、考慮する必要があります。
負債については、考慮はされません。
収入金額が不明な場合や、無職の場合は、潜在的稼動能力が認められる場合には、賃金センサスを用いるなどにより、収入を推計します。
過去の養育費の請求については、請求時からの分については認められますが、さかのぼっての養育費の請求は認められない可能性があります。
なお、養育費の時効は、定期給付債権であることから5年の時効に係ります。
ただし、過去の扶養料の求償請求(不当利得返還請求)とすると、10年の時効となる可能性があります。
養育費の算定は、義務者・権利者双方の実際の収入額を基礎として行なう。
養育費は、両親が収入に応じて分担すべきであるから、義務者のみならず権利者の収入も考慮される。
子が義務者と同居していると仮定して、子のために消費されていたはずの生活費がいくらであるのかを計算し、これを義務者・権利者の収入の割合で按分し、義務者が支払うべき養育費の額を定める。
以下で使用する言葉の意味は次の通りである。
「基礎収入」とは、税込収入から租税公課及び「職業費」並びに「特別経費」を控除した額であり、いわば「養育費を捻出する基礎となる収入」である。
「最低生活費」とは、生活保護法第3条が保障する最低限度の生活を維持するための費用である。
「職業費」は、給与所得者についてだけ認められるものとされている、給与所得者として就労するために必要な出費(洋服費、交通費、交際費など)である。
「特別経費」とは、家計費の中でも弾力性、伸縮性に乏しく、自己の意思で変更することが容易ではなく、生活様式を相当変更させなければ、その額を変えることができないものとされている。住居費や医療費などが該当する。つまり、養育費の分担に先立って支出を余儀なくされるであろう費用の総称である。
総収入の額、租税公課の額、「職業費」、「特別経費」をそれぞれ認定する。
「職業費」は実費認定ではなく、総収入の10~20%程度の割合で処理される。
その他については、すべて実費である。
最低生活費は、厚生労働省が毎年告示する生活保護基準によって認定する。
義務者の収入が義務者の最低生活費を下回っている場合には、義務者に養育費の分担能力がないものとされる場合がある。
子の生活費の認定は、義務者と子の同居を仮定し、義務者の基礎収入を、義務者と子それぞれの最低生活費の割合により按分して計算する。
この生活費を義務者・権利者双方の基礎収入の割合で按分し、義務者が分担すべき養育費を算出する。
従来の養育費算定方式では、計算が煩雑で容易には適用できず、当事者にとっては、予めどの程度の養育費になるか予測できなかった。
また租税公課の額や特別経費は実額で認定しているため、金額を巡って主張や資料提出の応酬が繰り広げられ、審理が長期化してしまっていた。
養育費は、もともと未成熟子の養育に要する費用であって、その日々の生活に必要な費用であるから、より簡易迅速に算定され、確実に確保されることが要請されている。
また、養育費については、当事者が自主的に取り決めすることが多く、ある程度予測可能なものでなければならない。
このような状況をふまえ、従来の養育費算定方式を基本としつつ、統計資料等の検討結果に基づき、その方式が実額認定としていた部分を、一定割合や指数に置き換えることにより、養育費の簡易迅速な算定方式を用いることとなった。
従来の方式では、租税公課及び特別経費を実額で認定していたが、これを改め、基礎収入を「税法等で理論的に算出された標準的な割合」と「統計資料に基づいて推計された標準的な割合」をもって推計する。職業費についても「統計資料に基づいて推計された標準的な割合」となるように見直すものとした。
また、子の生活費については、生活保護基準及び教育費に関する統計から導き出される「標準的な生活費指数」によって、子の生活費を計算するものとした。
さらに、義務者の基礎収入から最低生活費を下回る場合であっても、養育費分担義務を免れないものとした。
●義務者・権利者の基礎収入
=総収入×(0.34~0.42) (給与所得者)
総収入×(0.47~0.52) (自営業者)
●子の生活費
=義務者の基礎収入×(55 or 90)÷(100+55 or 90)
※子の年齢が0歳~14歳なら「55」、15歳~19歳なら
「90」とする。
※子が複数の場合は、上記55や90を適宜加えるものとする。
●義務者の養育費分担額
=子の生活費×義務者の基礎収入
÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
義務者が再婚し、配偶者や養子、実子といった扶養家族が増えた場合、新たな配偶者を「55」とし、他の子についても同様に「55」や「90」として上記計算式に当てはめ、父母で分担する。
権利者が再婚し、再婚相手が子と養子縁組をした場合、子の扶養義務は、第一次的には再婚相手となり、義務者は第二順位となり、原則的には養育費の支払い義務を免れる。
権利者が再婚しただけの場合には、再婚相手には子の扶養義務はないが、養育費の減額要素として考慮されることとなる。
義務者よりも権利者のほうが高収入である場合には、権利者と義務者がともに、義務者の収入額であるとして養育費を算定する。
養育費の計算式には、教育費については、年齢0歳から14歳までについては公立中学校の子がいる世帯の年間平均収入に対する公立中学校の学校教育費相当額を、15歳から19歳までについては、公立高等学校の子がいる世帯の年間平均収入に対する公立高等学校の学校教育費相当額が考慮されている。
源泉徴収票が有力な認定資料となり、源泉徴収票の「支払金額」が総収入に当たる。
給与明細書による認定の場合には、賞与や一時金を含めて算定する。
確定申告書が有力な認定資料となり、確定申告書の「所得金額」から「社会保険料控除」以外の項目について全て加算した額を、総収入とする。
当事者が資料の提出をしない場合や提出資料の信頼性が乏しい場合には、厚生労働省統計情報部の賃金センサスなどを利用して、適宜推計することになる。
賃金センサスで推計した場合には、当然のことながら、養育費の算定に関する限り給与所得者として取り扱うことになる。
権利者が十分稼動できる環境にあるのに稼動していない場合にも、統計資料によって潜在的稼動能力(例えばパート収入)の推計を行なうこともある。
ただし、子が幼い場合に、現実に稼動していない権利者の潜在的稼動能力を推計することについては、微妙な判断となる。
※判例タイムズNo.1111(2003.4.1)別冊
「簡易迅速な養育費等の算定を目指して」(P.285~P.315)、
判例タイムズNo.1209(2006.7.15)
「養育費・婚姻費用算定表の運用上の諸問題」(p.4~P.11)
より一部抜粋
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